犬の 慢性心臓病 における飲水量を獣医が考える

犬の 慢性心臓病 における飲水量について

獣医師にとって犬の慢性心臓病と肺水腫、僧帽弁閉鎖不全症は遭遇することのもっとも多い心臓疾患であり、疫学から病態、診断方法及び治療法、日常の管理方法にいたるまで様々な議論が熱くなされている疾患でもあります。そんな僧帽弁閉鎖不全症ですが、詳しい病態については、他のサイト等に譲りますが、今回は飲水量についてお話ししたいと思います。

犬の心臓病で飲水量を制限しないと肺水腫になる?

心臓病を患っているワンちゃんの家族なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

「水を大量に飲むと心臓に付加がかかって、肺に水がたまるリスクがあがります。そのため、水分を制限してください。」 

獣医さんからアドバイスを受けたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、半分正解で半分不正解です。なぜか。このことに関する我々の見解を説明いたします。

犬の慢性心臓病における飲水量に対する考え方

水分は、人が生きていくうえで、必須の要素であることは言うまでもありません。まずは、水分を摂取した際の行く先について考えてみましょう。

経口摂取した水は、食道、胃、腸へと流れます。大量に水分を摂取した場合は、腸での吸収が間に合わなくて下痢気味になったりします。これは、例えばビールを大量に飲んだ次の日に、下痢っぽくなるような場合です。

それほどの量でなければ、通常、腸から水分は吸収されていきます。腸から吸収された水分は、血液の一部になります。血液は、心臓に運ばれ、心臓から全身に送られます。

心臓から送られる血液のうち20%ほどは腎臓に運ばれます。腎臓では血液から尿を産生します。

ここで、大事なことは、腎臓は体液のバランスを正常に保つために、余分な水分を排泄したり、水分が足りなければ尿の量を減らして水分の確保に働きます。

つまり、腎臓の機能が正常であれば、多量に水分を摂取したとしても排泄されるのです。そのため、過剰な水分を摂取しない限り通常は、飲水量を厳密に制限する必要はないのです。

水分を過剰摂取すると、心臓に対して負荷がかかるのは、事実ですが、逆に制限をしすぎると脱水をきたし、腎臓に悪影響をきたします。とくに、慢性心臓病で利尿薬を内服しているワンちゃんの場合、十分な量の水を与えないといけないとされています。

慢性心臓病の犬は結局どうすればいいの?

まずは、正常な飲水量を知ることです。

犬の平均的な飲水量は、体重1㎏あたり、50-60mlといわれています。もちろん、この値は、平均的な値なので、運動をするワンちゃんの場合や、暑い夏の場合は、これよりも増えることもあるでしょう。

しかし、慢性心臓病のわんちゃんに長時間の散歩を強いる人はいないでしょうし、クーラーをつけないで家の中でハーハーしているのをただ眺めている人はいないでしょうから、おおむねこの量を目安に水分をあげればいいと考えられます。

水分補給のサイエンスは、実はもっと奥が深いのですが、現状十分なエビデンスがないので、この程度の説明にとどめておきます。どこかで、水分補給についてのお話をしたいと思いますので、お楽しみに!

腎臓と飲水量についてはこちらの記事をお読みください。

犬の飲水量と尿量の関係から疾患に迫る!

2018年11月12日

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