獣医師が解説!前立腺腫瘍について

普段あまり気にすることはないかもしれませんが、オス犬には”前立腺”という副生殖器があります。前立腺はそもそも何をしているか、どこにあるのか知っていますか?我々人間にもある副生殖器ですが、今回は、前立腺の腫瘍について解説していきたいと思います。

犬の前立腺と腫瘍について解説

前立腺は膀胱のすぐお尻側の尿道を包み込むように位置しています。前立腺の本来の働きは、精液がメスの生殖器内で活発に活動できるようにサポートする分泌物を作っています。しかし、人でも問題になることもあるように、加齢に伴って前立腺の疾患が問題になることが増えます。

良性と悪性の分類

まず一口に前立腺が大きくなるといっても、良性腫瘍と悪性腫瘍に原因が大きく別れます。

前立腺腺種(前立腺肥大)

前立腺の良性腫瘍は”前立腺腺腫”と呼ばれます。前立腺腺腫は精巣から分泌されるアンドロジェンという男性ホルモンの影響により肥大します。高齢になるにつれて、アンドロジェンとエストロジェンというホルモンのバランスが崩れることで発症すると言われています。

人では前立腺腺腫は内側に向かって肥大して行くため、排尿痛や尿のキレが悪くなるそうです。しかし、犬の前立腺腺腫では、前立腺は外側にも肥大して行くため、排尿痛や血尿だけでなく、周りの臓器に影響を及ぼすという違いがあります。外側へ肥大した際の具体的な症状として、直腸を圧迫し便が細くなります

ただし、良性腫瘍である前立腺腺腫は男性ホルモンの影響によるものなので、去勢を行っている子は基本的に発症しません。前立腺腺腫の場合でも、去勢手術を行うことで男性ホルモンの分泌がなくなるため前立腺は小さくなります。

悪性腫瘍

前立腺の悪性腫瘍は発生することは稀ですが、発生した場合には多くが悪性の挙動を辿ります。そのため、去勢しているオスの前立腺が大きくなっている時には悪性腫瘍である可能性が非常に高くなります。
悪性腫瘍の種類には腺癌や移行上皮癌が多く、未分化癌(どこからできたか分からないもの)、平滑筋肉腫、血管肉腫なども鑑別に挙げられます。前立腺の悪性腫瘍の特徴は局所浸潤性が強いため、構造的に近くにある尿道、膀胱、直腸に障害が出ます。
さらに、早い段階で肺や近くのリンパ節、骨に転移病巣を作る曲者です。

前立腺腫瘍が大きくなることでおしっこが出にくくなったり、直腸を圧迫して排便が難しくなったりすることで、生活の質の低下が避けられません。

前立腺腫瘍の診断ステップ

前立腺腫瘍の診断にはいくつかのステップがあります。
去勢歴の有無や、血尿などの症状と身体検査か診断を行っていきます。
動物病院ではまず始めに直腸検査を行います。直腸検査は簡単に実施でき、前立腺の大きさや形状、痛みの有無を評価するのに大変効果的です。

症状と直腸検査により前立腺疾患の関与が疑われるときは次に血液検査、レントゲン検査、超音波検査へと進みます。エコー検査で前立腺腫瘍が疑わしいときは、前立腺の細胞を採取して観察する細胞診へと進みます。

また、腫瘍の大きさや周りの組織への影響、肺や骨など他の臓器への転移がないかを確認する目的でCTの撮影を行うことができればより詳細な情を得ることができます。

悪性腫瘍の治療について

以上の検査結果に基づいて今後の治療方針を獣医師と相談しながら選択します。早期に発見でき、前立腺腫瘍が小さく、転移がない場合は外科が適応になります。
ただし、術後に合併症である尿失禁が高率に起こること、麻酔をかけることで免疫が低下し転移する危険性もあるため外科の選択は獣医師としっかりと話し合って決めましょう。

外科以外の選択肢

外科が不適応であれば、腫瘍により起こるうる症状に対して処置を検討します。抗がん剤や鎮痛剤の中には腫瘍を小さくする効果が期待できるものがあり、使用されることが多いです。他に腫瘍増大の抑制や骨転移の痛みを和らげる目的で放射線治療、排尿排便が難しい場合には尿道や直腸に管を留置する手術を行う方法もあります。

獣医師からの声

何れにしても、前立腺の悪性腫瘍の平均生存期間は短く、残念ながら3ヶ月未満であることが多いです。また生活の質を下げてしまう症状が出ることも問題になります。一番の予防は定期的な健康診断です。そして気なる症状が現れた場合は躊躇せず動物病院で受診してください。どの悪性腫瘍にも言えますが、早期発見、早期治療介入が予後の良し悪しを左右します。

〜まとめ〜

前立腺が大きくなる原因には良性と悪性があり、精巣のホルモンも関係している

前立腺疾患で出やすい初期症状は血尿や排尿痛、便が細い

悪性腫瘍の場合は、予後が悪い

早期発見、早期治療介入のために定期的な健康診断を!

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